名古屋高等裁判所 昭和40年(行コ)7号 判決 1966年7月19日
三重県松阪市長月町一七二番地の三
控訴人
中山木材生産有限会社
右代表者清算人
中山義雄
右訴訟代理人弁護士
加藤博隆
富島照男
名古屋市中区南外堀町六丁目一番地
被控訴人
名古屋国税局長
奥村輝之
三重県松阪市
被控訴人
松阪税務署長
佐野勝雄
右両名指定代理人
桝谷憲治
山本義雄
鈴木清彦
右当事者間の昭和四〇年(行コ)第七号法人税賦課処分取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、原判決を取消す、控訴会社の昭和二八年度(昭和二八年四月一日から昭和二九年三月三一日まで)の法人所得金額金二五七万八〇〇円、これに対する法人税額金一六一万九、二三〇円とする被控訴人松阪税務署長の法人税賦課処分および昭和三二年一二月二〇日被控訴人名古屋国税局長のなした審査決定はこれを取り消す、訴訟費用は第一二審とも、被控訴人らの負担とする、との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、採用および書証の認否は、左記の外、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
控訴代理人は、当審における証人布引三次郎、中津浜次郎、岡田偉、宮本隆、島与一郎の各証言および控訴会社代表者中山義雄本人尋問の結果を援用し、乙第一八号証の成立は知らないが、第一九号証の一、二の成立は認めると述べた。
被控訴代理人は、乙第一八号証、第一九号証の一、二を提出した。
理由
控訴人の昭和二八年度(昭和二八年四月一日から昭和二九年三月三一日まで)の法人所得につき、被控訴人松阪税務署長が所得金額を金二五七万八〇〇円と査定し、その法人税額(重加算税を含む)を金一六一万九、二三〇円として課税処分したこと、および被控訴人名古屋国税局長が右課税処分に対する控訴人の審査請求を棄却する旨の審査決定をなしたことは、いずれも当事者間に争がない。
そこで被控訴人らの査定の当否について考える。
(1) 本件においては、控訴会社の昭和二八年度における正確な所得額を把握し得る的確な証拠は存在しないから、原判決理由二記載のとおり、被控訴人ら主張の方法により控訴会社の所得額を推計する外ないものと考える。
(2) ところで控訴会社の昭和二八年度における売上高について金九、一五七万七、四一五円の限度においては控訴人の自認するところであり、他に雑収入が金八三万九、一二九円あることも亦控訴人の自認するところであるけれども、右雑収入の部分については、被控訴人らは受取利息として金三二万三、〇三一円のみを査定しているから、これを加えずに、以下右金九、一五七万七、四一五円のみを基礎として考える。
(3) 原審証人北村頼夫の証言並びにこれにより真正に成立したものと認められる乙第一〇号証によれば、材木業者の平均営業利益率は四、一パーセントであることが判かるから、前記金九、一五七万七、四一五円にこれを乗ずると、その利益額は金三七五万四、六七四円(円以下切捨)となる。
(4) 一方、控訴会社は昭和二八年度の必要経費として金一、〇四六万八、九〇六円を計上しているけれども、これを認め得る的確な証拠がないうえに、前記平均利益率は、その売上げに要する必要経費一切を控除して算出せられたものであることは、前記証人北村頼夫の証言により明白であるから、控訴会社の営業利益を営業利率によつて推計した以上さらに必要経費を考慮すべき筋合ではない。
(5) そうであるとするならば、右認定利益額の範囲内で、被控訴人松阪税務署長が控訴会社の所得を金二五七万八〇〇円と査定し、その法人税額を金一六一万九、二三〇円(重加算税額を含む)と通告した課税処分には何等の違法はないから、右課税処分を維持し控訴会社の審査請求を棄却した被控訴人名古屋国税局長の審査決定も亦何等の違法もない。
よつて右と同一結論に出た原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却すべきものとし、控訴費用につき民事訴訟法第九五条、第八九条に則り主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 成田薫 裁判官 神谷敏夫 裁判官 辻下文雄)